線や色の重なり方で実際とは違った見え方をするのが錯視です。
錯視パターンを知っておけば、デザインする時に事故らずに済みますし、意図して使えばコンセプトを際立たせるテクニックになります。
色んな錯視があるので、よろしければ参考にしてください。
錯視 種類と効果
錯視(さくし)とは、人間の持つ視覚システムが、実際の物体や状況とは違った認識をもってしまう現象のことです。
脳の情報処理が関係することなので、経験や身体的ポテンシャルに依存しません。
色彩心理学と違って再現性が高く、色や形の条件が揃えばたいていの方が誤認します。
ミュラー・リヤー錯視
錯視の中でもシンプルで、汎用性も高いのがミュラー・リヤー錯視 (Müller-Lyer illusion)。
線の両端に描かれた斜め線の向きで、中心線の長さが違って見えるという錯視です。
これを応用したのが目のアイラインや首元・足元のラインで印象を変えるテクニックです。
◎目のアイライン
目のアイラインは上と下に引くと目幅が短く見えます。
長く見せるには、ミュラー・リヤー錯視を応用して上側だけに引いたりつけまつげをつけることです。
◎胴体を長さ・太さ
胴体の長さ・太さは、首元と足元のラインでコントロールできます。
エビングハウス錯視
エビングハウス錯視(Ebbinghaus illusion)は、相対的な大きさ知覚に関連する錯視です。
中心の円の大きさは同じですが、円の周りに大きな円があるパターンと、円の周りに小さい円があるパターンとで大きさが違って見える現象です。
このエビングハウス錯視の面白いのは、見た目だけではなくモノを掴むために手を広げるといった行動にも影響するトコロ。
行動にも影響を与えるので、錯視の中では効果が強い部類です。
エビングハウス錯視
— FinalGathering™ (@FinalGathering) March 23, 2023
周囲の物の大きさに比例して
中央の点の大きさが
違って見える現象です。
オレンジの点は左右同じサイズ。
しかし左が小さく見えます☺️✨ pic.twitter.com/S2eqO6i5BD
ポンゾ錯視
ポンゾ錯視とは、両側に描いた平行線の上に斜め線を描くと、上側の線が長く見える錯視です。
遠くの点から見ると、その点からの距離に応じて線が異なる長さに見えます。
ポンゾ錯視って言うよ。
— にょ (@agar_effort) May 27, 2023
他にもバームクーヘンで有名なジャストロー錯視というのもあるよ。 pic.twitter.com/Hp1zviU9tO
カフェウォール錯視
カフェウォール錯視とは、レンガ模様の壁が、交互に突き出ているように見える錯視です。
実際にはただ均等に並んでいるだけですが、視覚的な影響によって立体的な変化が生じます。
平行に置かれた列が交互に傾いて見える(カフェウォール錯視とツェルナー錯視)とともに、動いて見える。 pic.twitter.com/ufLUNMCh2s
— Akiyoshi Kitaoka (@AkiyoshiKitaoka) February 18, 2021
カフェウォール錯視。
— 橋本憧大(フォルラン) (@yosakoiforuran) November 22, 2022
#札幌 #北海道 #キリトリセカイ
#ファインダー越しの私の世界 pic.twitter.com/fLnJB64x3S
ムンカー錯視
ムンカー錯視(Munker Illusion)とは、同じ色の図形が周囲の色味によって異なる色に見える知覚効果のことです。
色の同化や対比によって、暗い色との組み合わせではより暗く、明るい色との組みあわせではより明るく見えます。
文字の色は同じ。でも、まわりの色の組み合わせによってちがっているように見える……よくあるこれ、「ムンカー錯視」といいます。ちょっと色が変わるだけで、印象も読みやすさも変わりますよね。デザインはできませんが、企画書などの質を高めるためにも、色に関する学びを深めたいものです…… pic.twitter.com/c4ggeisbg4
— 校正ケンキュウ会┃編集者/ライター (@kouseikenkyukai) August 31, 2023
#現代4コマ
— リタ伯爵(猫) (@ritatti0515) August 23, 2023
ムンカー錯視 pic.twitter.com/AlCVwDGnmz
補色残像
補色残像とは、見えた色の補色が残像して残る視覚現象です。
見えた色の補色にあたる刺激を脳に送ってしまい、色が消えたり目を離すと補色のみが情報として残るために起こると言われています。
【錯視体験】
— 西岡寛麿-Hiromaro Nishioka (@hiromaro0422) August 31, 2023
真ん中の『+』をずーっと見つめていると… pic.twitter.com/dKMDk5nYfc
街中にある錯視
日常の風景を見回してみると、身近なものに錯視が見られたり、錯視を利用した設備がパラパラと見られます。
身近なもので気づきやすいのは、道路に関係するものが多いです。
身の回りの錯視
◎道路に浮き上がって見える障害物の絵
道路には、立体的に浮き上がる錯視絵を配置することで、ドライバーの危険運転の抑制や注意喚起を効果的に促すのによく利用されます。
立体的な障害物に見えることで、実際よりも道幅を狭く感じて中央を走るようになったり、飛び出しの可能性を想起してスピードを落とすといった効果があります。
あくまでも錯視なので、タイヤが踏んでも物理的な影響はなく、安全を阻害しないのも魅力です。
道路に描かれたボールを追いかける少女の3D錯視アート。よく見かける”スピード落とせ”よりは注意喚起に役立ちそう。もっともリアル過ぎると急ブレーキによる事故を招きそうだけど。 pic.twitter.com/mSAFxWbYZc
— くろさわ (@makt93) February 2, 2019
立命館大学の近くに錯視の道路があった。 pic.twitter.com/jLLRylCPBJ
— き い ち (@ritkichi) May 3, 2018
◎地面に案内標識
錯視を使うコトで、遠くから視認できるにもかかわらず、通行の邪魔にならない標識を設置することができます。
秋田駅にも錯視サインを使った案内標識が導入されていました。#3Dアート #トリックアート #錯視サイン #秋田駅 pic.twitter.com/46mb1Wl5Mm
— Suprane(スープレン) (@Sevoflurane583) January 31, 2021
◎上りと下りが逆に見える坂道
実際は下りなのに上りに見える道、実際は上りなのに下りに見える道というのがあります。
一般的に、下りor上りが段々に続くとこういった錯視が起こりやすいです。
小岩井農場(雫石町)のまきば園に向かう道路の途中でちょっぴり縦断勾配錯視を見つけました。遠くの坂は上り坂のように見えますが実際は下りがずっと続いてます。この道路以外にも縦断勾配錯視の坂が何ヵ所かありました。 pic.twitter.com/IAaLfLdGLZ
— Mの空間 (@flock_pina) November 23, 2018
この画像凄く好き。
— Ram2G (@hanaceleb_paper) March 11, 2018
喧騒感とともに無機質さも感じる。
画像から水平というものを正確に捉えられない感じも好き。
特に道路だけ見ると錯視が生じてる(登って見える)。
とりあえずエモい。 pic.twitter.com/zjFZBqWNf5
錯視 デザイン
錯視はデザインにも取り入れられ、近年では目を引く広告としての利用が目立ちます。
公共のスペースを利用し、映像を駆使した3DCGや、錯視テクニックをふんだんに使っただまし絵などで、たびたび注目を集めます。
トリックアート 広告
錯視を利用した立体的に見える美術館pic.twitter.com/pZV4DFhdyA
— 世界を見る眼 (@mirainoshiten_6) August 28, 2023
画材買出しついでに新宿駅へドラクエの3Dトリックアート広告を見に行ってきた(*^^*)柱の2つの面を同時に観れる位置からだと立体的に見える仕掛け(o^^o)真横から見て引き伸ばされているキラーパンサーが可愛いくて好きだった笑 pic.twitter.com/zrJQ9C3CTu
— 望早(みさき) (@blacksepia) August 30, 2015
たとえば、有名な新宿のトリックアート広告
— はいぬっか (@hinzka) June 9, 2022
完璧に立体なのはこの方向から見たときだけで、視点が変わると破綻してしまいますhttps://t.co/noqDWzwxCd
この韓国の広告凄い。裸眼3D広告と言われてるけど間違ってて、正確には『ここから見た時だけあたかも3Dに見えるトリックアート広告』別角度から見たら何を写してるか分からない🤔この角度からの動画しか見当たらないのはその為📺
— やんぴ (@ist_yohei) October 3, 2020
pic.twitter.com/rzIY7UnZRT
新宿駅歩いてたら、大坂なおみ選手の強烈スマッシュ!!。私の躍動感ゼロ#トリックアート広告#アリエールスポーツ pic.twitter.com/YpzvtDz5qE
— 丹治翔/朝日新聞ネットワーク報道本部(大阪) (@shou_tanji) March 28, 2019
エッシャー的な手法でイラストレーションを手掛けるアーティストも多いです。
海外SNSでシェアされまくってる錯視絵。この絵のゾウの足の数は何本?リプ欄で教えてください。 pic.twitter.com/SgdTvB7YiG
— もっちゃん|デザイナー (@mocchan_design) August 30, 2023
錯覚と錯視の違い
錯覚と錯視の違い
錯視と似た知覚現象が錯覚です。
2つの違いを簡単に言えば、錯視は視覚に関する誤った知覚を指し、錯覚はあらゆる感覚に関連する誤った知覚を指します。
◎錯視とは
- 錯視(さくし) は、主に視覚に関連した現象であり、私たちの目が物体やパターンの見え方を誤解する現象を指します。
- 錯視は、物体の配置やパターン、照明条件などによって引き起こされ、目の情報処理や脳の視覚システムの特性に関連しています。
- モラー錯視やポンゾ錯視などがその例です。
◎錯覚とは
- 錯覚(さっかく) とは、広い意味で感覚に関する誤った知覚や認識を指します。
- 視覚以外の感覚、例えば聴覚や触覚などにも関連する場合があります。
- これは、私たちの感覚器官や脳の処理によるもので、錯視だけでなく、聴覚的なものや触覚的なものも含まれます。幻覚や幻聴(聴覚の錯覚)などがその例です。
錯視の身近な例 まとめ
錯視は人間の知覚のうち、特に視覚を中心に起こる誤認現象です。
実物に変化を与えることなく認識だけをコントロールできるため安全で、色んなシーンへ応用されています。
【錯視の応用シーン】
- メイク
- ファッションコーディネート
- カラーコーディネート
- 標識
- 道路の行動抑制
- 広告表現
錯視をデザインなどにうまく取り入れると、テキストやモチーフをはっきりと知覚してもらう助けになるなど、メリットが多いテクニックです。
心の動きと違って再現性も高いので、頭の片隅に入れておくとふとしたシーンで役に立ちます。